バスは湖南省を一気に南下していった。しかし、もう少しで広東省に入るというところで、突然、停車してしまった。どうもギアの調子が悪く、坂道もなだめすかして走っている感じだったが、ついにエンジンもかからなくなってしまったらしい。乗客全員が降り、後ろから押すことになった。一キロほど押しつづけただろうか。幸い、そこに永興というサービスエリアがあった。そこで本格的な修理がはじまってしまった。これがはじめての中国のバスという人なら、「いったいどうなるのだろう」と不安に駆られたのかもしれないが、僕は車体を力いっぱい押しながら、なぜか水を得た魚のように体が軽くなる感触を受けていた。
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頻繁に故障する中国のバスに鍛え抜かれた身としたら、バスというものはしばしば故障するものだという意識が刷り込まれている。しかしこれまで乗った中国のバスは、故障など無縁といった面もちで走りつづけたのだ。それに揺られる僕は、寝不足で重くなった体を座席に埋めるしか方法はなかった。体を動かすことのできない疲れが澱のように溜まっていった。しかしこのバスが、頼りない音を残して路肩に停まったときは、一瞬、「これでなくちゃ中国のバスじゃない」と呟きそうになってしまった。