印刷単価の暴落

2011.07.24

溶けた鉛を扱う活字鋳造にせよ、広大な文選場が必要な活字拾いにせよ、職人芸の固まりである植字にせよ、活版は清潔なコンピュータールームから吐き出されてくる電算写植平版の敵ではなかった。これは誰がどう考えてもコンピューター化したほうが勝ちだ。当時のコンピューターは一台五百万から一千万円というレベルの代物だったが、臆せず設備投資を続けた。ここで告白するなら、設備投資の効果まで考えると電算写植平版の生産性は活版に比べて極端にいいというわけではなかった。場合によっては活版のほうがいいということもあったはずだが、当時はそこまで考えられなかった。とにかく目先の生産性の向上に目を奪われてしまっていた。ところが一九九二年というと、バブル崩壊の年である。日本の景気は急速に悪化した。どんな産業でもそうだが、バブルの時代に抱えた膨大な設備投資はすべて過剰設備となってしまった。残念ながら印刷業界では、電算写植がそうだった。バブルの時代、新時代のコンピューター印刷ともてはやされ、何千万円、何億円という設備が日本中にばらまかれた。これがいっせいに稼働をはじめる頃、バブルは崩壊し、子供は本を読まなくなった。結果としてやってきたのは、印刷単価の暴落である。
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